昨夜は少し面白いお客様がいらっしゃいました。
篳篥を演奏される某御仁です。
篳篥とは神社などで耳にすることがある、あの独特な音色の楽器です。
店主が最近音色を聴いたといえば祇園祭期間中、八坂神社で行われる還幸祭の時でしょうか。
ただ、音色は聞こえど御簾の向こう側なので、どんな楽器なのかは知りませんでした。
さてそんな楽器を携えていらっしゃったので色々お話しをしていると、まさかのレクチャーが始まりました。
リコーダーのような口元ではなく、まさかのリード。
口深くにくわえて、キスをするような口元で思いっきり吹く。
でもリードにはあまり力を加えないこと。
頬に空気をためて吹きだすような感じ、など。
なかなか無茶を言われるなぁと思いながらも、吹いてみると意外と音が出ました。
結お酒も入ってきましたのでそのまま演奏までしていただきました。
目の前で吹かれると驚くほど音が大きく、篳篥やリードの違いで随分と柔らかい音だったりで面白かったです。
高音はよく耳にしていますが、意外と低音もしっかり出るんですね。
ちなみに譜面はお三味線等、邦楽特有の縦書き。
素人なのでさっぱりわかりませんでしたが、インストの譜面と歌詞付きの両方の譜面も見せていただきました。
口伝で師匠から教えていただく文化なので、ただ楽譜通りに吹くものではなく、音の雰囲気を伝えるための記号がたくさんあるというのが一番の驚きでした。
さて、話の中で出てきたのですが篳篥の文化の中から、現在我々がよく使う言葉がいくつかあります。
例えば……
『打ち合わせ』
昔、京都・奈良・大阪(天王寺)には、それぞれ楽所(雅楽団体)があり、「三方楽所」と呼ばれていました。
それら三方楽人が奏楽のために一堂に召し出された際、微妙な演奏法を調整する為、前もって集まり、まず打楽器から約束事を取り決めたことによりできた言葉です。
『二の句が継げない』
雅楽の中の「朗詠」から出た言葉です。
朗詠は、漢詩で歌われ、一の句、二の句、三の句の三部分に分かれています。
「二の句」は高い音がその聞かせどころですが、低い「一の句」から一転、急に、高い音域の「二の句」に変わるので、とても音がとりにくいのです。
そのことから、この言葉があります。
『二の舞』
二舞(舞楽曲)から出た言葉です。
「二舞」は、通常「安摩」(あま)に引きつづき舞われます。
舞いぶりは、はじめは安摩の舞を舞台の下で見ているますが、やがて安摩が舞台を降り、二舞が上がります。
そして安摩をまねて舞おうとしますが、滑稽で似ても似つかぬひどいものになってしまうことから生まれた言葉です。
「安摩」は天竺の天子を表し、二人舞です。
左方の襲装束に雑面を付け、笏を持ちます。
「二舞」は、醜い年老いた夫婦の姿を表し、二人舞です。
左右の襲装束で、面は咲面(笑った面)と腫面(ただれた面)を付けます。
ちなみにこの舞は差別的な要素が強いため、最近ではあまり踊らなくなったそうです。
面白いので他にもあるかなぁと思い調べてみたらたくさんありました。
『野暮』『ろれつが回らない』『頭取』『序の口』等々。
興味のある方は是非調べてみてください。
普段、何気なく使っている言葉には色々歴史があったりするものなんですね。